人間は一人ひとり、違う考えや感情を持っています。だからこそ、受容という行為が非常に大切になってきます。
受容することで人間関係が良くなり、職場や家庭生活が豊かになるきっかけ作りが出来ます。今回は、この受容について掘り下げていきます。
受容とは、ありのままを受け入れること
そもそも人間関係における受容とは何でしょうか。言葉そのものの意味を辞書で確認すると「受け入れて取り込むこと」と出てきます。
これからお話しする受容と離れた意味ではありませんが、今回はさらに具体的に深めていきます。
リアルを受け止める
まず、相手のことをありのままに受け止めること。それが受容の基本です。
目の前にいる人が何を話そうと、どんな態度だろうと、まずはそれがありのまま起こっている現実なんだと認識しましょう。そして、その現実をまずは肯定も否定もせず、ただ受け入れましょう。
受け入れるためのコツは冷静に目の前のことを脳内で解説することです。
ああ、今はこれに対して喜んでいるのか、誰に対して怒っているのか、といった目の前の姿を認識することで、まずは受容する前段階として、認識すること、現実を観察することが出来るようになります。
相手の人間性に敬意を持つ
リアルを受け止めた後に、次は何を意識するべきか?
それは、相手の人間性に敬意を持つことです。相手の行動や感情、言動の源になるものは、その人の人間性。どんな考えや姿であっても、まずは尊重する。そのためには、決して上から評価する目線は持たずに接してください。
ここまでの“リアルに受け止め、それに対して敬意を持つ”ことが出来るようになれば、まずは受容の基本が完成します。
日々お伝えする内容を確認していただくことで、誰でも意識できるようになってきます。
ぜひ継続していきましょう。
ちなみに、この敬意を持つ意識。職場の部下に対して人間関係を作ろうとする際には要注意です。どうしても職場の力関係、立場に引っ張られてしまうことが多くあります。敬意を持っているようで“部下をたしなめる”といった立場になってしまいやすいです。
そうすると、相手はどうしても上から目線で話されているように感じてしまいます。立場に対する敬意ではなく、人間性に対する敬意であることを意識しましょう。あくまで相手も自分と同じ、一人の人間です。
受容と許容は違う
ここまで、相手をありのまま受け止めることを勧めて解説してきました。しかし、間違えてはいけないことがあります。それは、受容と許容は違うということです。
どういうことなのか、解説していきます。
社会のルールに反したことは許容しなくて良い
例えば、あなたが上司との関係性を良くしようと取り組んでいたとします。
しかし、その上司は暴力まがいのパワーハラスメントを繰り返していたとしたら、どうしましょう?
相手を冷静に観察して、どんな思考なのか考えることは良いかもしれません。しかし、実際にパワハラを受けていたら、そこまで冷静でいることは難しいですよね。気持ちも追い込まれているかもしれません。
相手におきている真実、姿として捉えるところまでは良いです。しかし、それを許す必要はありません。相手がしていることが、社会通念上許されない行為であれば、それは許容せずに対応しましょう。
同様に、家庭内の暴力(DVやモラハラ、虐待など)についても許容する必要はありません。もし人間関係の改善を目指す相手がそういった行為をしている場合は、改善を目指さずに逃げましょう。相手から離れることが最優先です。
相手の行動を現実の一部として理解する
社会通念上、許されない行動をしている場合、自分がその渦中にいると逃げ出すことも難しく感じますよね。
では逃げ出せない場合、どうしたらよいか?
まずは相手がしている行動が、現実に起きていることの一つだ、と認識することから始めましょう。実際に体験している場合、現実社会で起きている感覚ではないような、自分自身のことではないような、不思議な感覚になってしまうことがあります。
あくまで許容されない行為は、いかなる理由があろうと責任は相手にあります。自分との関係で、自分が原因で起きてしまっていることとは考えずに、切り離して認識・理解することが必要です。自分を責めるような思考は捨ててしまいましょう。
一つ変わらない事実は、あなたが大切な尊厳を持つ人間であることです。それは誰にも脅かされてはいけません。
受容されると、安全だと感じられる
受容と許容の違いを理解していただいたら、再度受容の重要性について話を戻します。
なぜ受容が人間関係を良くするために大切なのか。それは、人は受容されたときに安全であると感じるからです。安全であると感じる=安心することに繋がります。
仕事から家に帰ったとき、家族と安心して会話が出来ますか?
仕事で会話するとき、身分の安全を確信しながら、安心して会話が出来ますか?
それを実現するために、まずはあなたが受容をマスターしましょう。
人に対して自分を明かすことには不安が伴う
そもそも、受容される際には少なからず自分の外見、言葉などを相手に見せている時です。
さらに自分の考えや態度を相手に見せていく。その時には、どこまで話していいんだろう、見せていいんだろうと、不安が必ず伴います。
どの段階から不安を感じるかは、人それぞれ。心のパーソナルスペースによって変化します。そんな相手の不安をあなたが受容する、受け止めて受け入れることが出来たとしたら?
あなたとの会話に相手は安心感を覚えます。そして人間関係が良くなっていくことでしょう。これは現在、関係が良くない人との改善も可能です。関係が良くないときには、それなりの理由が伴います。
特に夫婦関係が上手くいかない、職場の人間関係が上手くいかない場合には効果を感じやすくなります。
これまで否定的だった相手が受容的になる。これは非常に印象を変える大きな材料になります。
受け止める雰囲気が重要
より関係を良くするために必要なこととして、自分の雰囲気作りも重要な要素です。
いつでも不機嫌そうな人、ピリピリしている人に、何でも話せそうだなと思える人は少ないですよね。表情や身振り手振りで相手を否定してしまわないよう、意識することも大切です。
特に表情を良くしたい場合、鏡でしゃべっている自分の表情を確認すると意識的に改善できます。いつもの会話中にはチャンスが少ないと思うので、自主練習として鏡を見て表情を作る。
少し恥ずかしく感じるかもしれませんが、人間関係を良くする一歩になると思いますよ。
相手がネガティブなことを言ったらどう反応するべきか?
受容は、相手のあるがままを受け入れる。では、相手が自分に、誰かに、何かに対してネガティブな発言をした場合、どのように反応しましょう。ネガティブな発言に対しては、非常に反応しにくいと感じると思います。
「わかるよー」と同調することも悪くはないですが、話した結果が明るい方向にいかず、互いに気が滅入ってしまうことも考えられます。
相手がそう感じざるをえなくなった理由を聞き、受け止める
ではどうしたら良いか。それは、相手がどうしてその感情を抱えてしまったのか、感じてしまったのか理由を聞くことです。そして、その答えを聞いた時に受け止め、受容しましょう。
誰しも感情にはきっかけ、原因が必ずあります。感情そのものをすべて受容するのではなく、その根元にある出来事を確認しましょう。
そうした結果「だからこう感じているんだね」といった、より相手に寄り添った対応が出来るようになります。きっと相手も、より深く話を聞いてくれる、わかってくれる相手だと、あなたを認識するでしょう。
自分のことも受容し、愛することが大切
ここまでは相手を受容することについてお話してきました。ここでもう一つ大切なことをお伝えします。
それは、自分自身のことも受容する必要があるという事実です。
人を受容する。聞き上手になる。このことは人間関係を良くする大切な要素です。ですが、そればかりでは疲れてしまう時が必ずやってきます。
あなた自身のことも、自分で受容してあげてください。あるがまま、大切な存在として認めてあげてください。その権利が、誰しも必ずあります。
その方法は、これまでお伝えした内容をそのまま自分に当てはめてください。決して否定出来ないあなたが、そこにいるはずです。人間関係を、周囲の人を大切にするあなたが、否定される理由はありません。
自分を愛するために、自分を理解する
ではより具体的にどうしたら上手く自分を受容できるか。それは、自分の態度や感情、反応を自覚しておくことです。自分の思考を知る。専門用語では自己覚知と呼びます。
自分の感情や反応が、どうして発生するのか。それがわかるようになると、感情に流されることが減ってきます。同時に、自分自身のコントロールが出来るようになるので精神的安定につながりやすくなります。
さらに、人との関係で自分の感情がなぜ動いたのかがわかるようになると、相手を受け止められる内容が増えていくことに繋がります。自分の感情と、客観的な反応を区別して対応出来るようになるからです。
相手のことを考えるばかりではなく、自分のことにも目を向けてみましょう。
まとめ:受容は、不安を感じさせない人間関係に繋がる
今回は人間関係をより良くするために大切な“受容”についてお話ししました。
人を受け入れ受け止める。そして自分も受け入れ受け止める。これが出来るようになると、人間関係のストレスはぐっと少なくなりますよ。きっと家庭・夫婦関係や職場関係が良い方向に変化してくると思います。
人生において人間関係は幸せの源泉であると同時に、大きな悩みの原因にもなります。より良くしていくためのスキルを、皆さんと共有し続けていきます。
皆さんの人生が豊かになるお手伝いをしながら、人生の1ページに何かを残せたら幸せです。